2013年9月24日火曜日

【特集】『アフリカ』第20号(2013年7月号)

 どうかぼくを幸せにしようとしないでください。それはぼくに任せてください。(アンドレ・レニエ)

 週一とか隔週とかの更新にしたい、なんて言いながら、もう1ヶ月半もご無沙汰してしまっておりました。『アフリカ』最新号(と言いながら、もう2ヶ月前の2013年7月号)の詳細にも触れないまま。8月は、とにかく、何もしなくてもつらいくらいの暑さ(?)で、しかも道草の家は、いまは夫婦ともに「外」にいることの多い仕事をメインにしているので、バテバテでした。と、言い訳しつつ、そろそろ、あれこれ、書きはじめましょう。


 『アフリカ』第20号。もう20冊、ですか。早いなぁ。事実上の創刊号が2006年8月で(「創刊号」とは呼んではいなかった。「2006年8月号」だった)、第10号が2010年11月で、今回が2013年7月号だから、10冊つくるのに、だいたい3〜4年かかっている。最初のうちは年2〜3冊で、昨年からペースが上がったのですが。
 20号は、開かれる? 開かれない? の、ドア号です。こんなけったいな雑誌、興味ないわ、って方はどうぞ遠慮なく手にとらないで。でも、なんか惹かれる、よくわかんないけど、という方は、ぜひ、開いてみてください(ついつい開いてしまった方へ、これも縁です。よろしくお願いします、笑)。

 ドアがある、開かないと、入れない。はい。


 巻頭には、『アフリカ』の初期をご存知の方にはお馴染みの、片山絢也くんが書いてくれました。「風の声を聴く人たち」というタイトルで。「統合失調症」と呼ばれる「病気」の話と、『アフリカ』という、この雑誌のこと、それから、ある農家がやっているレストランの話が、リレーのように出てきます。短い文章ですが、いかにも片山くんらしい文章で、スンナリとは読めない、いい文章です。


 つづいて、下窪俊哉が取材した「OYATSUYA SUN!」という写真と記事。風雷社中のねもじーが今夏のはじめに企画・開催した小さなイベントのことを書きました。


 毎度おなじみ、目次と、おふざけのクレジット・ページがあり(今回はそこに可愛い「カエル」くんがいましたでしょう?)、それにつづく本編(?)のトップ・バッターは、芦原陽子の詩です。「さよならを教えて」というタイトルは、フランスのシンガー、フランソワーズ・アルディの1960年代のヒット曲から。
 この詩、7/21に開催した「道草珈琲カフェ with OYATSUYA SUN」夜の部で朗読をしました。そのときのことを、芦原陽子自身がブログに書いてます。コチラ


 20号、という、きりのいい数字なので、『アフリカ』について、何人かに書いてもらいました。高城青「一度だけのゲストのつもりで」と中村広子「自然な流れ」は、1月のトーク・イベント「“いま、プライベート・プレスをつくる”ということ」で作成した冊子からの転載。守安涼「海岸線のアウトライン」は、そのときの“アウトテイク”のお蔵出し。そのイベントから発生した「よむ会」のレギュラー・メンバー、笠井瑠美子さんには、新たにお願いして書いてもらいました。「一冊の価値を問う」というタイトルですが、「本」そのものを問う、といったところの目印をつけてくれた、嬉しい原稿でした。

 「本」そのものを、そもそもの出版活動という営み自体を、ゼロから(というか、日々の暮らしのなかから)問い直すような「場」を、つくりたいという気持ちを、今年は抱きはじめた年でした。(過去形になっているのは、まぁ今年は、もうこれくらいにしておくか、という気持ちがあるからですが…)


 おそらく、『アフリカ』に、このような対話の記録が載るのも、イベント報告記事が載るのも、はじめてだったのではないでしょうか。1月の対話の記録を下窪俊哉が再構成した「“いま、プライベート・プレスをつくる”ということ〜淘山竜子さんとの対話から」です。
 淘山さんの雑誌『孤帆』と『アフリカ』の出会いから、縁となった幾つかの同人雑誌や、その歴史、『孤帆』と『アフリカ』の成り立ちと運営、「ZINE」のこと、文学賞のこと、「評価」のこと、「読者」と出会うということ、などなど。
 面白い話は、もっともっとたくさんあったのですが、オフレコの話も多くて、泣く泣くカットしました。その場で話すだけなら、話せそうなので、このつづきは、また、たま〜に(数年に一回くらい?)やってもいいかなぁと思ってます。肝心の、“プライベート・プレス”という言葉にも、まだ迫れていなかったように思っているので。

 つづいて、黒砂水路の「校正以前」は、二回目。差別用語の話から、大手出版社の校閲部へ出向になった書き手が、さ、どんな仕事をしているか…

 「ゴゥワの実る庭」の旅を終えた中村広子が、次に向かう旅は、「タルチョのゆれる場所」。この号からまた連載になる模様です。どこの街の話でしょうか。「カルマ」という言葉を思い浮かべるあたりで、初回は終わります。「カルマ」とは、どんな言葉でしょうか。

 鈴木永弘「今年の花見」は、4年前に離婚した元・妻と再会する男性のひとり語り。男と女が「別れる」とは、どういうことなんだろう? ということに迫った快作です。


 つづいて、珈琲焙煎舎の“忘れられていた”インタビュー第3弾。店主のひとり営業になってからは初めてのインタビューです。その店主と道草くんの、ゆる〜い対話をお楽しみください。

 中島悠子「御幸町御池下ル」の3回目は「訪ねくる人」、御幸町御池下ルの家にとって“常連客”だった来訪者たちの話です。半世紀前を、いま! として生きていた人たちが、まるで目の前に返ってきたように描かれています。2013年の『アフリカ』を代表すると言ってもおかしくない作品で、今後にもぜひご期待ください。


 20回目の記念号、最後を飾っているのは、すっかりお馴染みになった高城青のエッセイ漫画「それだけで世界がまわるなら」。今回は「夏の思い出」です。けだるくて、切ない思いも連れてくる夏の空気感をたっぷりお届けします。